東京モーターショーから見えてきたこと

今回も前回・前々回と同様、参加したイベントの感想です。

先月末の話になりますが、東京モーターショーに行ってきました。
自分がクルマ好きということもあるのですが、自動車産業の現状と今後を占う意味でも、この場はとても大切だからです。

まず、傘下の部品メーカーなども含め、自動車産業は日本の基幹産業であるという点。
グローバル市場としても大きく、そして日本企業が「勝てる」分野はクルマだけ、と言っても過言ではありません。

そして今、自動車産業は100年に1度の変革期であるという点。
ハイブリッドからEV、燃料電池というパワートレインの進化、そして自動運転技術をはじめとするICTによる市場のデジタルトランスフォーメーションは、全てのビジネスパーソンが注目すべきでしょう。

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2年に一度開催されている東京モーターショー。
私は毎回行っていますが、そこで中心に来るテーマの変遷こそ、全産業の今と今後の変化を示していると感じます。

過去は「環境」。実用化されたハイブリッドカーを中心に、EVや燃料電池車はコンセプトレベルで展示されていました。
その後徐々にICTとの連携、いわゆる「コネクティビティ」がうたわれるようになり、クルマを中心に据えたスマートホームやスマートシティの考え方が提示されるようになりました。

そして今回。
やはりメインテーマは「自動運転」、そしてサブテーマが「EV」と言ってよいでしょう。

では、ここからはその2つのテーマについて、私が会場で実感したことを元にした考察をご紹介します。



まずは自動運転。

結論から言うと、「再来年のモーターショーに期待」です。
つまり、自動運転の技術が実用化されるだけでなく、それが普及し始めるには、思ったより時間がかかりそうだと感じました。

一番大きな理由は、「GoogleやAmazonがブースを出していない」こと、そして次に「トヨタがメインコンセプトにしていない」ことです。

今やアジアのモーターショーで東京の地位は低下しており、結果フォードをはじめとした米国メーカー、そしてフォルクスワーゲンやメルセデスという欧州メーカーも出展していません。
だから仕方ないとも言えますが、本来自動運転技術をテーマとするなら、米国ICT関連企業の参加が必要条件です。

Google等が参加しないということは、単に東京モーターショウの地位が低下しているということだけでなく、この技術が普及するにはまだまだ時間がかかる、という現実がそこにあるということ。

思うに、技術としてはAIや画像認識も含め、ほぼ実用化のメドはたっているものの、その他の要因がハードルとなっていると思います。

その他の要因とは、安心・安全に自動運転車を利用するための「社会的コンセンサスとインフラ」です。

万が一事故が起きたときの責任は誰にあるのか、という法的問題。
信号機やETCなどの交通インフラの大規模な改修。
これらを誰が考え、実行するのか。そしてグローバル環境で標準化するのか。
そのための議論は進んでいるわけですが、この社会的コンセンサスとインフラの方向性によって、技術開発の方向性も違ってきます。

水面下で行われているであろうこの議論。願わくば我が国の自動車メーカーと経産省がインシアチブをとってほしいものです。



次にEV。
これも会場で実感したのは、「あと10年はEV主流のクルマ社会は来ない」ということです。

確かにフランス、イギリスなどが内燃機関、つまりエンジンで動くクルマを廃止する方針を打ち出しています。また世界最大市場である中国も、EV比率を一定以上にすることをメーカーに義務付ける方針を打ち出しました。

これによって「時代はEV」という印象を私も持っていたのですが...

会場では、確かに日産をはじめとしてEVシフトを表に出す展示もありました。
しかしそれは部品メーカーも含めると、全体の半分もありませんでした。

実際調べてみると、欧州でのEVシフトは、各国政府が米トランプ政権に対して「地球温暖化対策の重要性」を主張する手段のひとつという意味合いもあるようです。
また中国にしても、開発にコストと経験が必要なエンジンのないEVなら、欧米そして日本のメーカーにも太刀打ち可能と考えているから、という理由は明らかです。

もちろん今後の方向としてEVの普及が進むことは当然ですが、これまた充電設備というインフラの問題がある以上、思ったより普及には時間がかかると見てよいでしょう。



であれば、今回のモーターショーは不作だったのか。
そんなことはありません。

自動運転やEVに関する「技術」を、「こういうところにも活かせるのか!」と感じた展示もいくつもありました。

たとえばある部品メーカーは、飛び出してくるかもしれない歩行者がいることのアラートを、フロントガラスに表示する技術を展示していました。

これは画像認識とAIを活用したARの技術です。

言い忘れていましたが、モーターショーの花は自動車メーカーですが、今後の自動車産業、そして他の産業の今後を考えるという視点では、「部品メーカー」こそモーターショーの主役です。

あなたなら、ご紹介した「画像認識とAIを活用したAR」を、どんな分野にどう活かしますか?
ぜひ、考えてみてください。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパス で専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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