アニメ『正解するカド』の"正解"とは

「ヒトよ、どうか正解されたい」

深夜アニメ『正解するカド』をご存じでしょうか。

アニメ、ましてや深夜アニメなんて、とお考えの方もいるでしょう。
しかし、断言します。

シン・ゴジラを面白いと思ったアナタなら、また社会や政治、エネルギー問題に関心の高いアナタなら、そして「考える」ことが嫌いでないアナタなら...

このアニメは観るべき!

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この作品、ヒトコトで言えば「ファーストコンタクト系のハードSF」です。
もちろんエンターテインメント作品ですから、ちょっとしたコメディ要素もありますし、イケメンや美女を鑑賞するという要素もちゃんとあります。

ざっとストーリーを紹介すると、こんな感じです。

主人公はエリート外務官僚。海外での仕事で羽田を飛び立つ直前、滑走路に一辺2kmの立方体(これがカド)が降ってきて、飛行機ごと飲み込まれる。
カド内部に取り込まれた主人公qaの前に、この宇宙以外の世界(異方)からの来訪者、ヤハクイザシュニナが現れる。
ザシュニナは主人公を介して、日本政府と交渉を始める。
彼が日本に供与を申し出たのは、無限に電気エネルギーを取り出せる球体「ワム」であった。
ザシュニナの意図は? 主人公や日本(の政治家)、そして世界はどう動く?

第1話は様々な登場人物を描きながら、息もつかせぬストーリーが展開します。
それはまさに『シン・ゴジラ』。
音楽もシンフォニックで、東映アニメーション製作ながら、東宝特撮を彷彿とさせます。

現在既に第6話まで進んでいますが、次回第7話はここまでの総集編らしいので、見逃した方もそこで追いつくことができます。

また、Amazonのプライムサービスを利用している方なら、プライムビデオで全エピソードが見放題。さらに、第1話の前日譚である第ゼロ話も観ることができます。
(別にAmazonのステマではありません。念のため(笑))



さて、ここまでなら単にオタクである私の「おすすめアニメ」を紹介しているだけなのですが、このプログで私が紹介するには、当然理由があります。

夕学五十講にも登壇いただいた、K.I.T.虎ノ門大学院 教授である三谷宏治さんも、既にDIAMOND Online上の「ヒトはアニメ『正解するカド』に正解できるのか?」というエントリーで、イノベーションと社会変革の視点で語られています。

では、私の視点は?

ひとつは、主人公とザシュニナ、異方と人類(から選ばれた日本)、日本と国連、こうした様々な存在間での「交渉」を含む「コミュニケーション・スキル」について考える良い機会になるという点。

そしてもうひとつが、「正解とは何か」を考える良い教材(ケース)になるという点です。



まず、コミュニケーション・スキルの視点ですが、第ゼロ話から第2話まででも、「なるほど」と思わせてくれます。

たとえば、「数字は相手が理解できる単位に置き換えて」説明する、というシャルパンティエ効果もそうですし、相手が提示した答えに対してすぐ判断するのでなく、「なぜそうなるのか」を質問することの重要性が、きちんと描かれています。

特に私が「これは交渉の本質だ」と唸ったのが、「依頼された交渉は、交渉を成功させるよりも、依頼した相手の真の目的を実現することを優先すべき」という主人公の姿勢でした。

これ、かなり「深い」と思いませんか?

他にも、交渉に先立って信頼関係を築こうとするシーンや、場の空気を和らげるヒトコトなど、「交渉のプロ」である主人公から学ぶべきことは多いです。



そしてふたつめの視点。

本エントリーの一行目、「ヒトよ、どうか正解されたい」。

これはザシュニナが無限エネルギー抽出装置である「ワム」を日本国に供与することを申し出たときに言ったセリフです。

本作品のタイトルは『正解するカド』。

この"正解"という言葉が、この作品のキーワードであることは明らかです。

正解とは何か。

算数のテストならいざ知らず、そもそも国や個人の「判断」に唯一の正解などあるのか。

本作品の登場人物たちも、正解を探して悩み、それでも避けることができない「判断」をします。

日本に供与された「ワム」。
当然国際社会からは大きな反発を受けます。国連の常任理事会は、日本に対してワムを全て国連に差し出すこと、拒んだ場合は武力制裁も含めたあらゆる用意があることを提示します。

それに対して日本国首相が出した答は...

ネタバレは避けますが、第5話ラストのこのシーンでは、一緒に観ていたムスメとともに「首相カッコイイ!」と小さく叫んでしまいました(笑)

もちろん、その判断が「正解」かどうかはわかりません。

どんな判断にも、かならずメリットがあり、そしてデメリットがあります。
この首相の判断に対しても、怒りの声が巻き起こります。

しかし、判断を人に任せたり、また判断を先送りにしたところで、何かが好転することなど希です。
政治やビジネスには期限や納期がありますし、特に現代では「スピード」が優劣を決めてしまうことも多いのですから。

しかしだからと言って、思いつきやその場の感情で判断してしまうのも、また避けなければならない。

さあどうする。

自分は何を判断しなければならないのか。

唯一の正解は理論上ないとは言え、自分が大切にしたい誰かや何かにとって、最も「正解に近い」答は何か。

考えろ。

あきらめるな。

考え抜いて決断したら、その答には胸を張れ。



そんなことも考えさせてくれる、この『正解するカド』。

ほら、観たくなってたのではありませんか?

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパス で専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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