相対的価値観と絶対的価値観


3分間ラーニング, 講師の公私

最近、大学生のムスメと、少々アカデミックな議論をします。
彼女は今心理学を中心に勉強しており、その関係で哲学や社会学に関することも論点となります。
とは言え、議論の発端はだいたいアニメや特撮など、いわゆるオタク系なのですが(笑)

先日(話の発端は忘れましたが)のこと。
なぜか途中から「価値観」の話になりました。

「価値観の違いかあ。つまり、どれがその人の中で重要か、という優先順位が違うってことだよね」

こう私が言うと、「それは違うと思うよ」とムスメに反論されました。



ムスメはこう続けました。

「優先順位って、つけてない人の方が多いと思う」
「というか、つけられない人が多いんじゃないかな?」

私の「どういうこと?」という問いに対する彼女の説明は、箇条書きにするとこうでした。

◆お金か命か、のような二元論だけでなく、世の中のいろんなことを評価し、「関心の度合い」や「好きさの度合い」で順番をつけて並べるのが、『優先順位付けで構成された価値観』

◆しかしほとんどの人はそんなやり方は面倒くさくて、あるいはやり方を知らないからできない。できるのは、一部の論理思考力が高い人だけ。

◆ほとんどの人の価値観は、提示されたモノゴトに対して「好き/嫌い/どうでもいい」のように、ひとつひとつを感覚的に評価したもの。言い換えれば、『個々の評価の集合体として形作られた価値観』。

なるほどなあ、と思いました。

仕事柄、また思考の癖としても、ふだんから優先順位ょつけて考えていた私には、ある意味「目から鱗」の価値観の定義でした。

さらに言い換えれば、私の持つ価値観は『相対的価値観』であり、もうひとつが『絶対的価値観』と言えるでしょうか。

ムスメとの議論はそこまででしたが、とても興味深かったので、さらに考えてみました。



さて、『相対的価値観』の持ち主(以下 Comparative Sence of Value からCSV)と、『絶対的価値観』の持ち主が(同様に Absolute Sence of Value からASV)、何か、たとえばある提案の是非について議論したらどういうことが起きるでしょうか?

是非の意見が割れていたとしたら、CSVから見るとASVの反論は理解しにくいかもしれません。
「あれ? こっちはいいけどこっちはダメなの?」と、時には矛盾があるように感じられるでしょう。
しかしASVの立場から見ると、矛盾はありません。「それはそれ、これはこれ」と、論理的に整理された優先順位を使うのでなく、個別に評価しているわけですから。

反対に、ASVから見れば、CSVの説明はとても複雑です。理屈をこねくり回して、こちらを煙に巻こうとしているように感じられるかもしれません。
「もっとシンプルに考えようよ」と言いたくもなるでしょう。

これでは話がかみ合わないのも当然です。まとまるもの、もまとまらなくなるかもしれません。

では次に、「自分の主張を変える」ことができる、言い換えれば「思考が柔軟」なのは、どちらのタイプでしょうか?

これについては、条件付きでCSV,ASVどちらでも、柔軟な思考ができる人はいると考えます。

その条件とは、「自己のプライドを守る」ことに対する価値観です。
CSVであれば、議論の成果や人間関係より、この「プライドを守る」ことの優先順が高い人は、思考の柔軟性が低いと言っていいでしょう。
またASVであれば、「プライドを守る」ことを「重要」と絶対評価していたら、やはり思考の柔軟性は低くなります。



さて、こう考えていくと、「2通りの価値観」と「自己のプライドを守ることに対する価値観」という二軸でマトリクスができ、人を4つのタイプに分類できます。

ここで皆さんに考えていただきたいのが、まず「自分はどのタイプか」、そして「コミュニケーションの相手はどのタイプか」です。

これを認識することにより、今まで上手くいかなかった議論が、少しは良い方向に行くと思うからです。

自分がCSVで相手がASVであれば、あまりロジックにこだわらないこと。
反対の立場なら、少しは相対的に優先順位を意識して考えてみること。

また、どちらのタイプであれ、「自分のプライドを守ろうとしていないか?」と自問し、柔軟に考えようとすること。

やはり「相手に合わせたコミュニケーション」が、良いコミュニケーションなのですから。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパス で専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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