「理論」と「論理」の違いとは?


思考トレーニング

前回のエントリーで、「前後を入れ替えても、ちゃんと意味のある言葉になる2字熟語をできるだけたくさん考えてみてください」というお題を出しました。


そこで出てきた「理論(りろん)/論理(ろんり)」について、今回はもう少し深く考えてみましょう。

私たちは、しばしば「理論的には~」とか「論理的に考えれば~」という言い方をします。
この理論(的)と論理(的)というふたつの言葉、皆さんはどう使い分けていますか?

「同じじゃないの?」とお考えの方もいるかもしれませんが、このふたつは決して同義語ではありません。
個人的には、類義語ですらないと思っています。

では、この「理論」と「論理」はどう違うのでしょう。
できるだけシンプルに、辞書など引かずに、まずは自分のアタマで考え、あなたなりの言葉で説明してください。



「続きを読む」をクリックするのはその後で!(笑)



では、私なりの考えをご紹介します。
まずは問いへの答の前に、思考プロセスからいきましょう。



高校時代に習った漢文の読み方を使うと、「理論」は「論じられる理(ことわり)」であり、「論理」は「理(ことわり)に基づいて論じること」と解釈できます。

そして「理(ことわり)」とは何らかの法則を意味しますから、ここから

「理論とは、言葉によって説明できる何らかの法則性、つまりある分野における知識体系を意味する」

と定義することができます。
「バッティング理論」などの使い方が具体例です。

それを踏まえて「理(ことわり)に基づいて論じること」を考えると、

「論理とは、何らかの法則性に基づいて論じたり考えたりすること、つまり筋の通った説明や思考の「やり方」を意味する」

と定義できます。
「論理的な説明(思考)」という使い方です。



次にこのふたつの言葉を英訳して考えてみます。

「理論=Theory(セオリー)」、「論理=logic(ロジック)」ですね。

「セオリー通り」とは言っても「ロジック通り」とは言いませんね。
また、「彼はセオリーを知っている」は使いますが、「彼はロジックを知っている」も、使った人を見たことがありません。

反対に、「そのロジックはおかしい」という使い方はしても、「そのセオリーはおかしい」という使い方はしません。
「ここではそのセオリーは通用しない」とは言いますが。

ここからも、「理論=知識体系」「論理=筋の通った説明/思考の方法」であることがわかります。

つまり「理論」とは、「論理的な思考/説明のベースとなるもの」であり、「論理」とは、「理論を発見するための手段」なのです。

さらにシンプルに違いを説明するなら、こんな言い方ができるでしょう。



「理論はアウプットであり、論理はそのプロセスである」





さて、あなたの答と比較すると、この答はデキはいかがでしょう?

もちろんこれは私なりの答であり、「これが正解」と言うつもりはありません。

ちなみに本エントリーを俯瞰すると、この「理論はアウプットであり、論理はそのプロセスである」という答がひとつの「理論」であり、この理論を導き出すプロセスで「論理」を用いていたわけですね。



しかしこうして「論理的に」その定義を考えると、「理論/論理」に限らず、私たちがいかに様々な類義語を「いいかげんに」使っているかがわかるはずです。

本ブログでは何度も言っていますが、こうした「類義語の違いを定義する」のは、思考トレーニングにもってこいであり、さらにあなたが誰かに何かを伝える際の「言葉選びのセンス」を高めることに繋がります。

では、次回をお楽しみに!

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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