組織の『文化』を創造する


3分間ラーニング

『組織風土改革』というスローガンがあります。
また、『誇るべき企業文化』という言葉もあります。

では、このよく使われる『風土』と『文化』とはどのような違いがあるのでしょう。

組織論やその背景としても使われることのある文化人類学では、その違いをしばしばこう定義します。

「風土とはいつの間にか根付いてしまった習慣のことであり、文化とは意図的に根付かせたものである」

さて、あなたの会社や部署にはどのような『風土』がありますか?
そして意図的に作り上げた、誇るべき『文化』と呼べるものはありますか?



ある企業や部門、ひいては業界や国単位で、様々な文化や風土があります。
前回のエントリーで述べた日本人の国民性としての『優秀なお人好し』も、日本の風土によって形成されたものと言えるでしょう。

ここでは、話を私たちのビジネスにおける単位である会社や部署に絞って考えてみましょう。
先の問いへの答として、あなたの会社や部署でも某かの文化や風土と呼べるものがあるはずです。

たとえばそれは「自由闊達な社風」かもしれません。
しかしそれは時として「個人主義の蔓延」ととらえられるかもしれません。

また、「上に物申しにくい雰囲気」があったり、「部署が違えば別会社」が風土となってしまっている組織もあるでしょうし、その対極である「誰とでも対等に議論する」風土や文化が根付いている組織もあるでしょう。

さて、こうした組織の個性とも言える風土や文化は、どのようにして根付いていくのでしょうか。

私は、ヒトコトで言うとこうした風土や文化は『思考とコミュニケーションの習慣』によって根付いていくと考えています。

そしてその習慣は、上が下に(つまり先輩が後輩に)強制したり、下が上を見倣うことによって半永久的に受け継がれます。

具体例を挙げましょう。

新入社員が仕事の何かに疑問を感じ、物申した時に上司が「そういうこと言うのは10年早い」とか「余計なこと考えずに黙ってやれ」と言う。
これが上から下への強制です。

また、直接こうしたことを言われなくても、会議で誰も上司の意見に反論しない姿を見れば、若い人達は「会社ってこういうものなんだな」と思ってしまう。
これが下が上を見倣うということです。

その結果、若い人は考えることを止め、上に対して物申すこともしなくなる。
そして次第にそれを当たり前として認識し、疑いを持たなくなり、自分が上の立場に立った時にも同様に下に対してそうした習慣を強制する。

こうして「上に対して物申せない」という『悪しき風土』が根付き、受け継がれていくのです。



だから『組織風土改革』を考えるのであれば、そのステップは明快です。

まずやるべきなのは、自分達が「当たり前」とか「そういうもの」とか「これが普通」と思っていることを一度全て疑ってみる。
そして『悪しき組織風土』と思われるものを全てリストアップします。

ただ、自分で自分の常識を疑うのは口で言うほど簡単ではありません。

だからやはり外部の力が必要となります。
とはいえ、組織コンサルの力を借りるだけが外部の活用ではありません。
とにかく外に出掛け、多用な業種や職種の人と対話すれば良いのです。

こうして『悪しき組織風土』をリストアップしたら、次はそのプライオリティを考えます。

今、自身の組織が置かれている状況において、どの風土がクリティカルな悪影響を及ぼすのか。
企業理念や長期的ビジョンに照らし合わせて、どの風土がその実現の阻害要因となるのか。
競合他社との差別化を実現するためには、どの風土を変えなくてはならないのか。

こうした様々な問いを立て、変えるべき風土を絞り込みます。
組織だけでなく一人の人間にも様々な変えるべき思考やコミュニケーションの習慣、つまり癖がありますが、それらをいっぺんに変えようと思っても無理だからです。

さあ、変えるべき『悪しき組織風土』が定まったら、あとはそれをどう変えるか、つまり『良き組織文化』を明確にしましょう。たとえばそれが「上に対して物申せない」であれば、「誰とでも対等に議論できる」文化になるわけです。

次のステップはもちろんHow。「どうやってその文化を形成するか?」ですが、ここで忘れてはならないのが、「どうやってその文化を継続させるか?」も併せて考えることです。
企業風土改革は一過性で終わらせてはなりません。長期的に継続して初めて「文化として根付いた」と言えるはずです。

最後は、当然こうして明確化した風土改革の具体的施策を実行に移し、そしてその効果測定を行って軌道修正を続けることとなります。
長い年月を経てこびり付いた風土を変えるには、長期戦を覚悟しなければなりません。



トヨタの「「なぜ?」を5回聞け」は典型的な『良き組織文化』を根付かせる良き習慣を継続させるためのキーワードです。

リクルートの「会議では他人と違うことを言え」もそう。

トヨタにしろリクルートにしろ、入社当初の人材に大きな違いはありません。いや、多くの会社がこれからも迎えようとする若者達は、実際の所そんなに能力の違いは大きくない。

彼ら・彼女らが優秀な人材となるか否かは、入社後の風土や文化で決まるのです。

トヨタに入ると「「なぜ?」を5回聞け」と言われ続けるから、自然と深く考えることが習慣になる。
リクルートに入ると「会議では他人と違うことを言え」と言われ続けるから、自然と多様な答を探し、その結果クリエイティブな思考が習慣になるのです。

だから長期戦は覚悟しなければなりませんが、いつの間にか根付いてしまった『悪しき組織風土』を変え、『良き組織文化』を根付かせることは、全ての組織において可能なのです。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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