『優秀なお人好し』が生き残るには


3分間ラーニング, ニュースの切り口

アルジェリアでの人質事件、というよりはテロは痛ましい結果に終わりました。

とはいえ、日本経済そして日本企業がグローバルに活路を見いだす流れを止めるわけにはいかないのも事実。
皆さんの中にも実際にグローバルなお仕事に関わられている方も多いでしょう。

私たち日本人は今後、どのようなスタンスでグローバル経済で戦っていくのか。
たとえドメスティックなマーケットでビジネスを行っていても、調達がグローバルであったり、また海外製品・企業がコンペティタとなることを考えると、これは全ての日本人ビジネスパーソンの課題と言えます。

日本人らしい戦い方。
これはやはり日本人の特性から考えてみるべきでしょう。

典型的な日本人像、私はそれは『優秀なお人好し』ではないかと思うのです。



日本の製造業の地盤沈下が叫ばれています。
自動車産業はエコカー技術で頑張ってはいるものの、かつての技術立国を支えていた電機産業は青息吐息の状態です。

しかしそれでも日本の技術は海外で高く評価されています。
だからこそ、今回のアルジェリアでの事件が起こったとも言えるでしょう。
具体的には製品の信頼性や高い練度を必要とする高精細技術など、まだまだ日本の技術は捨てたものではありません。

そしてそれに裏打ちされた正確性。
時間通りに来る電車や飛行機など、日本以外の国では「ありえない」のです。

「日本人は優秀」
これはグローバルでの一貫した評価でしょう。

加えて日本人は真面目かつ謙虚。
震災時の譲り合いや助け合いなどが、海外で驚きを持って報道されたことをご存じの方も多いはずです。
ただ、この特性はともすれば「日本人はお人好し」と受け取られてしまうのもこれまた事実。

そう、私たち日本人は『優秀なお人好し』と認知されているのです。

では、この『優秀なお人好し』はグローバルでどう戦うべきか。



ここで皆さんの中学・高校時代を思い出してください。
あなたの周りにも、この『優秀な(勉強が出来る)お人好し』、がいたはずです。もしかするとあなた自身がそれだったかもしれません。

では、この『勉強が出来るお人好し』は、クラス全体でどのような位置づけでしたか?

私は、このキャラクターは大きく2通りの位置づけに大別できると考えています。

それが『委員長タイプ』『食い物タイプ』

どちらも勉強はできるわけですが、『委員長タイプ』はお人好しさが「俺が何とかしなくちゃ」という方向に出るために、結果的にクラスのリーダー的存在になる。
それに対して『食い物』タイプは、お人好しさが「頼み事を断れない」方向に出るために、試験前にノートを貸してあげたり、酷いケースではパシリに使われたりする。まさに食い物にされてしまうわけです。

いかがでしょう。かなりステレオタイプな分類ですが、なんとなく近いイメージの『優秀なお人好し』はいたのではありませんか?

なぜに私はこのようなメタファーを使ったか。
それは、日本人ビジネスパーソンは『食い物タイプ』でなく、『委員長タイプ』を目指すべきと考えるからです。

海外の企業やビジネスパーソンからお人好しさにつけ込まれ、不利な条件での契約や、基幹技術の流失を招いてしまう。
このような例はたくさんありますし、これはビジネスだけでなく外交に関しても言えるでしょう。

「日本人との交渉は楽」

これは要するに日本人や日本企業が舐められ、『食い物タイプ』として認知されているからです。

だから目指すのは『委員長タイプ』。

しかし問題は、どうしたら『食い物タイプ』でなく『委員長タイプ』として認知されるのか。



ここでもう一度学生時代の『委員長タイプ』の特長を思い出してみてください。
『食い物タイプ』との根本的な違いはどこにありましたか?

すぐ思いつくのが『積極性』でしょう。
『食い物タイプ』が言いたい言葉を遠慮して飲み込んでしまうのに対し、『委員長タイプ』は言いたいことは言います。それが「クラスみんなのため」になると思っているからです。

だから確かにお人好しではありますが、「コンフリクトを怖れない」という強いメンタルを持っています。「みんなに好かれることなんて無理」という割り切りもそこでは必要です。

しかし『食い物タイプ』と『委員長タイプ』を分けるのは、何もこうしたメンタル面だけではありません。
『委員長タイプ』は、「勉強以外にも得意分野がある」という特長があったはずです。
たとえば「サッカー部でも活躍している」などのスポーツであったり、また「仲間とバンドを組んで学園祭で演奏する」といった文化面であったり。

もちろん『食い物タイプ』にも得意分野のある人はいるわけですが、それが所謂オタク趣味などの場合、あまり人前で語るのは憚られたりします。

ですから厳密には「勉強以外にも人に誇れる王道の得意分野がある」というのが、『委員長タイプ』のもうひとつの特長です。



いかがでしょう。かなり具体的に『食い物タイプ』と異なる『委員長タイプ』の特長が見えてきたのではありませんか?

では、これらから『優秀なお人好し』である私たち日本人ビジネスパーソンが、『委員長タイプ』としてグローバルで戦うための具体策を考えていきましょう。

まず、メンタル面については
◆言葉を飲み込まず、主張すべきことは主張する
◆コンフリクトと敵を作ることを怖れない
という本物の委員長同様のマインドセットが必要でしょう。
そのためにもやはり英語でジョークが言える程度の語学力はほしいものです。

そしてもうひとつの「人に誇れる王道の得意分野」。
私は「ゴルフ以外」に何かひとつふたつこれを持っていることが重要だと考えます。

具体的には美術や音楽、文学にスポーツ。
西洋の絵画やクラシック音楽、ロシア文学にサッカーなど、グローバルスタンダードと言える分野は共通の話題にしやすいでしょう。

しかしそれ以外にやはり「日本人ならでは」もほしいところ。
たとえば日本の仏教芸術や古典楽器、俳句や相撲など、歴史観や日本人の価値観なども含めて語れると、間違いなく一目置かれるはずです。

やはり「仕事だけ」優秀では、『食い物タイプ』になりやすいはずです。



今回の分析は、前述したように確かにステレオタイプです。
しかし、グローバル環境以外にもヒントになることがあったはず。

人は誰しも相手から舐められ、利用されるだけの『食い物タイプ』にはなりたくないものです。
そして私はこれ以上食い物にされる日本人と日本企業を見たくない。

何か少しでもお役に立てるよう、今後とも頑張っていきます。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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