『シンプル』に走る時代(その1:時代認識編)


3分間ラーニング

現代はとても複雑です。
様々なことが「ややこしい」時代と言えるでしょう。

石原新党の立ち上げに、時期が未だに見えない解散総選挙など、混沌とした政局。
原発の是非も含め、先行きが不透明なエネルギー政策。
日中/日韓の領土問題や安全保障に代表される外交。
自動車・電機という、日本を牽引してきた企業が苦境に立たされているグローバル経済。

これにいじめ問題や消費税率アップなど、私たちの生活という視点も含めると、「いろんな問題や課題が山積および関係していて、収拾が付かなくなるほど本当にややこしい」状態になっています。

さて、こんな「ややこしい」状態に置かれた時、人はどう動くでしょうか。




そう、「考えることを放棄」します。

自身のキャパシティを越える情報量と情報間の関係性に飲み込まれたら、処理がオーバーフローし、フリーズするのも仕方ありません。

そしてその後は「誰かが指示してくれるのを待つ」か、「割り切って今やれる(やりたい)ことをやる」ようになります。

「とにかくシンプルに考えよう」とするわけですね。

逆に置かれた状況がそんなに複雑でなければ、心の余裕も違いますから「ちゃんと整理して考えよう」となる。

たとえば高度成長の時代は、状況はずっとシンプルでした。
電気冷蔵庫やテレビそして自動車と、同じモノをみんなが欲しがり、「もっと豊かに」と価値観もそれほど多様ではありませんでした。

しかし本当に状況がシンプルだったかと言うとそうではありません。
現代社会において不可欠の環境問題や反日感情など、「状況をややこしくする」要因が顕在化していなかっただけとも言えるでしょう。

もっと正確に言えば、多様な情報・論点・視点に私たちは「気づいていなかった」ということ。
つまり以前の私たちは、本当は複雑な状況を「シンプルに見ていた」のです。

だからシンプルな状況をじっくり眺め、ロジックを駆使し、「もっと豊かに」というニーズに後押しされて頭補巡らせることが出来た。

しかし私たちは、次第に気づいてきました。
私たちの「豊かになりたい」というニーズに対応すべく生み出された技術・商品・サービスによって、どんどん状況が複雑になってきたこと。
そして気づいていなかっただけで実は以前からあった「状況をややこしくする」要因にも。

その結果、現代が「本当にややこしい」複雑な状況であることを認識するに至ったのです。



豊かになるために、成長するために、考えて考えて考えて行動した結果、どんどん考えることが難しい複雑な状況を創り出してしまったわけです。

とはいえ、私は「だから高望みせず、考えすぎず、シンプルな状況を享受するべきだった」などというつもりは全くありません。

なぜならば、立ち止まることは死を意味するからです。(少し極端な言い方ではありますが)
この世界(地球)も形あるモノである以上、いずれ滅びます。
私たちにとって大事なのはモノである地球より、命ある人類です。
いずれ来る(何百年、いや何千年、何万年後かわかりませんか)地球の終焉の際には、人類は新天地(どこかの惑星)に移り住むしかありません。

「どうせ人類も滅びるのだから」という考えも否定はしませんが、命あるものは最後まであがき続ける使命があると私は考えます。

だからそのためにも、最後の時まで立ち止まるわけにはいかないはずです。



ちょっと人生観・世界観の話になってしまいました(笑)
話を本筋に戻しましょう。

さて、このように私たちは思考という情報処理の限界を越えるほど複雑な状況下にあり、だからこそシンプルな思考と行動を(自他問わず)求めます。

これはもう時代のニーズ・要請・トレンドであり、逆らうことの出来ない流れです。

では、こうした「ややこしい時代」であることを受け入れた後、「シンプルであることが求められる時代」にどう対応・適応するべきか。

これを考えるにあたって、私は時代の2面性に着目することが出来ると考えました。

すなわち、『シンプルを求める時代』を私たちにとって『プラス』ととらえることと、その反対に『マイナス』ととらえることです。



次回とその次では、前者をマーケティングの視点で、そして後者を情報リテラシーの視点で考えてみたいと思います。

今回はその導入部の時代認識編ということで、少々退屈かつ概念的な話になったかもしれません。
次回からはもっと具体例も織り交ぜつつ、「シンプルであることが求められる時代」を『好機/機会』とプラスにとらえてどう利用すべきか、またその反対に『危機/脅威』とマイナスにとらえてどう付き合っていくのか、何に留意すべきかについて、私の考えを述べようと思います。

では、お楽しみに。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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