「自分に合った仕事」とは


3分間ラーニング, マイ・ブックマーク

久しぶりに日経BP Onlone の記事をまずご紹介します。

  「この仕事は合ってません!」と1カ月で辞める新人の"事情"
    まん延する「仕事探し」シンドロームの弊害(日経BP Online)

さて、この記事にあるような新入社員に限らず、「自分に合った仕事がやりたい」と考える人は多いでしょう。
そして場合によっては転職を繰り返しながら、自分に合った仕事を探す人も。

しかしあえて言います。

このある意味正当に思える「自分に合った仕事をやりたい」。

これって実はかなり甘い、かつワガママな欲求ではありませんか?




仕事探しをジクソーパズルのメタファーで考えてみましょう。
求職する個人をパズルのピースのひとつ、ピースがハマる空きスペースを職場/ポストだと考えてみてください。

そうすると「自分に合った仕事を探す」という行為は、パズルのピースとしての自分が寸分の誤差もなくハマる空きスペースを探すことに置き換えられます。

さて、ここで考えてみてください。
そんな「自分がジャストフィットする」空きスペースを、何十万ピースの広大なジグソーのパネルから探すのがどれだけ大変なことかを。

それが見つかる確率など、それこそ天文学的確率です。

ましてや採用市場は、必ずどこかにジャストフィットの空きスペースが存在するパズルのように単純ではありません。

これがまず「自分に合った仕事がやりたい」が『甘い欲求』である根拠です。

さらに言えば、この考え方はパズルのピースとしての自分の形を変えたくないということであり、要するに「自分は何の苦労もしないから、そんな自分に合った仕事を用意しろ」と言っているに等しいのです。

これこそ『ワガママな欲求』以外のナニモノでもありません。



そもそも「やりたい仕事」と「自分に合った仕事」はイコールではありません。

たとえば歌手という仕事を「やりたい」と考えたとしても、自分にそれに見合った歌唱力その他の『歌手にとって必要な能力・資質』が無ければ、それは「現時点での自分に合った仕事」ではないはずです。

それでも歌手になりたいのであれば、そう、その必要な能力・資質を自分のものとするための努力、たとえば歌を練習するをするしかありません。

こうして自分のピースの形をパズルの「ハマりたい部分」に合わせるために努力する。
これは仕事をする上で当然のことです。

研修や公開セミナーを受講する。
本を読む。ネットで情報収集をする。
様々な人々と交流する。勉強会を自分で企画する。

こうして「あそこにハマりたい」と願う空きスペースに合うピースになれるように、自分自身で形を変えていく。

これが過去・現在・未来を問わない「プロフェッショナルへのプロセス」です。

しかし私は別にそれを強制するつもりはありません。
「別にやりたい仕事なんかないし、自分を変えるつもりもない。とにかく苦労せずに稼ぎたい」という方は、どうぞ「自分に合った仕事」を探してください(笑)

ですからここから先は、自分というピースの形を変えて「ゆくゆくは自分のやりたい仕事をやりたい」という方を前提として話を進めます。

さて、やりたい仕事をやるためには努力が必要ですが、その努力も思いつき/行き当たりばったりでは仕方がありません。

4月最初のエントリーでも述べましたが、『無駄な努力』はしたくないですから。

ですからやはりそこには『戦略』が必要です。

これもずいぶん前のエントリーで書きましたが、『合目的的』『計画的』『選択的』の3要素が揃ってはじめて『戦略的』と言えます。

つまり今回のテーマを『キャリア戦略』のひとつと位置づければ、
1. やりたい仕事/なりたい自分などの目的・ゴールを明確化する
2. 自分を取り巻く環境の機会と脅威、そして自分自身の強みと弱みしっかり分析し、把握する
3. 努力項目のプライオリティを明確にする
ことが重要です。

1. は戦略の起点であり、3. のプライオリティ付けの拠り所としても重要ですが、既にやりたい仕事がある方も、もう一度考えてみるといいかもしれません。

2. については、新卒の就職活動でも重要視されている『自己分析』がその代表格でしょう。
やりたい仕事(ハマりたい空きスペース)と現状の自分とのギャップ(弱み)や、もっと伸ばすべき能力・スキルを明らかにすることで、パズルのピースの形をどう変形させるべきかが見えてきます。
ですから自己分析だけでなく、それを照らし合わせる(現在のピースの形が空きスペースにどう合っていないかを確かめる)外部環境分析もしっかりやっておくべきでしょう。

ここまで来れば、ピースを変形させるために何をやらなくてはならないか、その選択肢(オプション)が自ずと見えてくるはずです。

ただ、私たちの有する時間やお金、そして資質には限界があります。
また、オプション全部に手をつけようとすると、どうしても時間・お金が分散しますから、中途半端になってしまうリスクが発生します。

だから3. の「選択する」、つまりオプションの中で「まず何からやるか」のプライオリティを明確にする必要があるのです。

こうして自分自身のピースの形を変え、ハマりたい空きスペースに「自分をハメてくれ」とアピールする。
「自分のやりたい仕事をやる」ための努力とは、これが理想だと思います。

しかし、それはあくまで理想(笑)
前述したように人生はパズルのように単純ではなく、また厳密ではありません。

多少空きスペースとピースの形が合っていなくても気にする必要はありません。
いや、そもそも自分にジャストフィットする仕事などこの世の中にはないとすら言えるでしょう。

たとえその時ジャストフィットしても、空きスペースも、そしてピースの形も一定ではありません。
時間の経過と経験によって常に変化するのも単なるパズルとの相違点です。

だから戦略的な求職活動を行うのは重要ですが、それ以上に「まずはここから始めてみるか」というおおらかな気持ちを忘れてはいけないと思うのです。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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