真の問題を定義しよう


3分間ラーニング

「○○に困っているのですが、どうすればいいでしょうか?」

「わかりました。では、なぜ○○になっているのか、その原因を考えてみましょう」



問題が提示された時、安直に解決策を考えるのではなく、きちんと原因分析をする。
これはとても大事です。

なぜならば、問題解決策のオプションは必ず複数存在しますから、より適切(効果が高く低コストなのが理想的)なオプションを選択するためには、問題の真因を探し出し、そこにピンポイントで手を打ちたいからです。

手当たり次第に解決策を実行するのは、限られたリソースの無駄遣いでしかないのです。



しかしちょっと待ってください。

確かに原因分析はピンポイントで手を打つことに繋がり、問題解決の生産性を上げる(要するに効果的・効率的にということ)ためには重要なプロセスではありますが、実のところ「いきなり原因分析する」のも、賢いやり方とは言えないのです。




具体例で考えてみましょう。

たとえばあなたが「最近体重増えちゃってさあ。どうしたら良いのかな?」と知人から相談されたとしましょう。

「じゃあ、なぜ体重が増えたのか分析してみよう。そうだな、この問題は摂取カロリーの増加と消費カロリーの減少に分けて考えることができるから・・・」

これはMECEに分けて原因分析しようとしており、なかなかロジカルではあります。



しかし、私ならその知人にまずこう問います。

「体重が増えたことがなぜ問題なの?」



知人は面食らうかもしれません。

「そ、そりゃあ体重増えるとマズいだろ」
「いや、だからそれがどうマズいのかを知りたいんだけど。体調とか悪くなったとか?」
「いや、そういうわけじゃなくて・・・んー、そう言われると...」

この最初の「それがなぜ問題なの?」という問い。
これは固い言い方をすれば、『影響分析』の問いです。

問題とは必ず「○○になっている」という状況の形で表現されますから、「その状況が何にどのような悪影響を及ぼすのか」を明確にするのが目的です。

その結果、「そういえばなんとなくマズいと思ってたけど、たいして困らないな。いたって健康だし、妻子持ちで今さらモテる必要もないし」となれば、「体重増加は実は問題ではない」ことになります。

はい。これで問題は解決...するまでもなく解消したことになります(笑)

もちろん「実は、今までの服が着られなくなって新しい服を買うのに金がかかるのに困っているんだよ」のように、明確な悪影響が提示される場合もあるでしょう。

であれば経済的な面への悪影響が懸念されているわけですから、最終的な解決策は「服を買う以上にお金のかかるものはダメ」ということがこの時点で明らかになります。
つまり無駄な解決策を考え、評価する時間がここで不要になるのです。

さらに言えば、この知人の真の問題は「無駄な出費が増えている」ことになりますから、「体重増加の原因分析」より「最近出費が増えていることの原因分析」の方が、より適切な原因分析とすら言えるでしょう。



これが『真の問題を定義する』ということです。

提示された問題に対していきなり原因分析するのではなく、まずは影響分析を行い、真の問題を定義し、共有することが必要なのです。

特に組織(自社や顧客など)においては、問題(と当初提示される)の関係者は多岐に渡ります。問題と言われているある状況が各関係者に及ぼす影響も、また多様です。
だから「その状況が誰にとってどのような悪影響を及ぼしているのか?」を問い、明らかにしないと、解決策の選択で揉めたり、また一貫して当事者意識が持てないメンバーが出てきたりします。

これでは問題解決の生産性が上がるわけもないのです。



この考え方が重要になるのは、個人や組織だけではありません。
社会問題についても同様です。

たとえば我が国の懸案事項として『原発事故に伴う放射能汚染(低線量被曝)』があります。

今まで経験したことのない、目に見えない放射能に対する恐怖があるのは当たり前です。
そこで「このまま今のところに住み続けていいものか...」や「食べ物は本当に安全なのか...」のような不安や悩みを多くの方が抱えています。

そうした方がたは「放射能に汚染されつつある(低線量被曝のリスクがある)」状況を問題と捉えていると考えられるわけですが、では、ここで真の問題を定義してみましょう。

低線量被曝の悪影響は?

これはほとんどの方が「そりゃあ健康被害だろう」と考えるはずです。もう少し医学的に明確化すれば、「癌にかかる可能性の高まり」と言っていいでしょう。

そう、確かに放射能は怖いのですが、この状況における私たちの真の問題は『発がんリスクの増大』なのです。

では、放射性物質による発がんリスクは?
他の発がん性物質のリスクとの比較や、発がんのマイナスリスク(つまり食生活などによる発がんリスクの低減)のデータは見ましたか?

さて、この件はここまでにしておきましょう。
私は何も「放射能汚染なんか心配することはない」、と言いたくてこんなエントリーを書いているわけではありませんので。



私が今回言いたいのはこれだけです。


自分が問題だと思っているのは本当に問題なのか?
それは誰にとってどんな悪影響があるから問題と言えるの?

目の前にある問題に対して、まずはこれを問いかけてください。
そして真の問題を定義した後、原因分析や解決策分析を行ってください。

無駄な心配や努力をしないために。
そして真の問題を解決してハッピーになるために。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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