2011年11月28日 3分間ラーニング

イノベーションと進化論

「イノベーションが必要だ」

よく聞く言葉です。

この“イノベーション”。直訳すれば「新しく取り入れたもの/刷新・革新」ですが、広義には『変革』全般を指すこともれば、「新商品や新技術の開発」とかなり限定的に使わけることもあります。
ちなみに「新商品や新技術の開発」という定義は、ある英語の文献中で使われていた“innovation”を“技術革新”と訳したのが定着したようです。

ここでは本来の意味も勘案し、またビジネス用途に特化した形でこの言葉を「新しい技術や知識、考え方などを取り入れて新たな価値を創造し、組織や社会に大きな変革をもたらすこと」と定義ししたいと思います。

さて、ビジネスにおいてなぜイノベーションが必要なのでしょう?

「そんなの当たり前」でなく、今更ながらこの「そもそも論」を考えてみてください。
それにこの言葉、以前より多く使われるようになっていませんか?
だとすれば最近とみにこのイノベーションの必要性が増している、とも言えそうです。

では、それはなぜなのでしょうか?




その背景としては、やはり環境変化の大きさとスピードが挙げられるでしょう。

また、ビジネスにおけるグローバル化はTPP問題を見ても明らかなように、今や全ての業種、それも規模の大小に関わらず影響を受けるようになっています。
マクロ環境としては中東から広がった政情不安、競争環境におけるアジアでの覇権争いからも、10年前と今では隔世の感があります。

“イノベーション”がなかば流行語のようになっているのは、この「激変する環境下で生き残るため」という側面が大きいと言えるでしょう。

地球、そして生物の歴史に置き換えると、まさに今は恐竜たちが滅びたあの時代と同じなのかもしれません。



さて、生物の歴史を引き合いに出すと、やはのダーウィンの進化論を思い出す方も多いでしょう。
変化する環境に対応して自分自身を変化させること、つまり『進化』はビジネスにおいてもしばしばキーワードとして使われます。

そしてダーウィンが述べたと言われる「強い種が生き残るのではない。環境に応じて変化する種が生き残るのだ」が、なかば名言のように組織変革や人材開発の分野で使用されています。

しかし残念ながらダーウィンはそのようなことは言っていません(笑)

そればかりかこの名言(迷言)は、進化論の誤った解釈を広めてしまう一因でもあるのです。

そう、「進化は意識的に可能」という誤った解釈を。

具体例で考えてみましょう。
「キリンは高い枝の葉を食べるために首が伸びた」とあなたは考えていませんか?
それはつまり「高い枝の葉を食べようと首を伸ばしていたら少しずつ伸びた」ということですが、本当にそんなことが可能でしょうか(笑)

キリンはまだ思考できますが、植物の進化はどうでしょう。

本当に「虫たちに受粉してもらうために派手な色の花を咲かせるようになった」などということが起こりえるでしょうか。

ことの真相は簡単です。

キリンの祖先は確かに今より首が短かった。しかしその長さは一定ではなく、ちょっと長い首をしていたキリンがより多く葉っぱを食べることができたのでその種を残した。その積み重ねが現在のキリンの姿です。

植物も同様。同じ植物でも様々な色の花を咲かせていたわけですが、環境変化で虫が減少したことにより、目立たない色の花は受粉してもらえずに淘汰されただけです。

ここまで来たらもうおわかりでしょう。

そう、進化の本質は『変化の意志』などではなく、『多産による多様性』です。

ダーウィンが言いたかったのは「強い種が生き残るのではない。環境に応じて変化する種が生き残るのだ」ではなく、「環境変化に強い種というものはない。多産な種が生き残るのだ」ということなのです。



なんとなく身も蓋もない(意志を否定しているように見える点で)結論のようですが、実はこの進化の本質はビジネスにおいても私たちに大きな示唆を与えてくれます。

しばしば「環境変化に柔軟に対応できる経営を」などと言われますが、「それは具体的にはどうすれば実現できる?」という問いに答えられる人がどれくらいいるでしょう。
要するにほとんどこれは「頑張ろう」という『かけ声』レベルなのです。

そもそも「環境変化を正確に読む」ことなど不可能ですし、組織はガメレオンのように環境変化に合わせて瞬時に色を変えることなどできません。

だからできることは…

そう、様々な変化、中には予測もしていなかった変化が訪れても、あの宇宙探査のはやぶさのように「こんなこともあろうかと」とそれに対処することだけです。

そしてそうした対応を可能とするための前提条件が『環境対応策の数』です。

つまりビジネスにおいても『多産』がキーワードであり、それこそがイノベーションなのです。



この激変するビジネス環境で生き残るためにはどうすればいいのか?

それは「常に何か新しい取り組み(イノベーション)で変革の試行錯誤を続ける」こと。

それしかないとも言えます。

だからそこで重要になるのは2つ。

まず「イノベーションを阻害しないこと」。

これが一番重要で一番難しい(笑)
なぜならば新しい取り組みには必ず抵抗勢力がいるからです。そしてたちの悪いことにその抵抗勢力はイノベーションを起こそうとする人の上司である場合が多い。

別の言い方をすれば「イノベーターのセーフティネット」の整備が企業のこれからのキーワードとなるでしょう。

そしてふたつめのポイントが「イノベーションの生産性を上げること」です。

進化論を引き合いに出しましたが、「何が環境に適応できるかわからない」からといって、手当たり次第にイノベーションの試行錯誤を行うのはナンセンスです。

当然ですがヒト・モノ・カネ・情報、そして時間というリソースは有限ですから、これらの効率的な活用が必要です。
また、「どのような方向性でイノベーションを起こすのか」が定まっていなければ、やはり無駄なリソースを使ってしまうことになりますから、現状分析や未来のシナリオ予測などはできる範囲でやっておく必要があるでしょう。

この『イノベーション戦略』については、また機械があれば書いてみたいと思います。




さて、イノベーションの定義と必要性を進化論をアナロジーにお話ししてきたわけですが…

あなたの会社ではこの言葉が単なるプラスチック・ワードになっていませんか?
あるいは、かけ声倒れで終わっていませんか?

そしてあなたはイノベーションを起こそうとしている側ですか?
それともイノベーションを邪魔する側のヒトですか?

まずはそこから自問自答してみても良いかもしれません。

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