イノベーションの鍵は忍耐力


3分間ラーニング

自宅のパソコンを買い替え、レスポンスは快適になったもののオフィス2010になかなか慣れない(笑)桑畑@慶應MCCです。

さて・・・

「ウチの連中からはなかなかいいアイデアが出ない」
「自分はアイデアマンじゃないからなあ」

と思ったことはありませんか?

「イノベーションが必要」とはよく言われますが、その前提条件として既存の常識や経験、枠組みに縛られない斬新な発想が必要なのは確かでしょう。

しかし、斬新な発想なんてそうそう出るものではありません。

パッと凄いアイデアを思いつく人など100人に1人もいないでしょう。
その100分の1の人だって、ひょっとすると「パッと凄いアイデアを思いついた」ように見えても、実は凄く時間を掛けて考え抜き、ようやく捻り出したアイデアなのかもしれません。

単に努力を他人に見せていないだけかもしれないのです。
著名なクリエーターの方々も、「七転八倒しながらアイデアを捻り出している」とよく言われています。

この『発想』において、講師という仕事を続けてきて最近ようやく確信するに至りました。

「イノベーションの鍵は忍耐力」だということに。




セミナーや研修の中では、参加者に「考えて自分なりの答を出してもらう」場面が数多くあります。

特に正解がひとつでない問いかけをする時には、あえて順番にひとつりずつ当てていくのですが、私はそこにルールを定め、全員に守ってもらいます。

そのルールとは、「他人と同じ答は一切認めない」です。

このルールで端から順番に当てていき、多いときには30人に答えてもらいます。

このやり方、間違いなく後半に当たる人が不利です(笑)
その点では甚だ不公平なルールなのですが、そんなことはお構いなしにしつこく時間を掛けて考え、答えてもらうと、面白いことが起こります。

なんと、「後半になるほどみんなが「おお」と感心するような仮説が出てくる」のです。

「おお」の理由は答の鋭さであったり、笑えるものであったりと様々なのですが、いずれにせよ『斬新な答』が後半になると必ず出てきます。

逆に序盤に出る答えは、はっきり言って『誰でも考えつきそうな普通の答』であることが多いです。

さて、これは研修やセミナーに特有な現象なのでしょうか?

私はそうは思いません。

研修やセミナーに限らず、我々が考えて何か答を出す(ここでは唯一の正解があるものは除きます)場合、やはり最初に思いつくのは自分自身の経験に基づいた答です。

だからそれは「自分を含めた誰かが言ったことがあり」「そんなに突拍子もない話でもなく」「否定する人もまずいないであろう」答になる場合がほとんどです。

要するに『無難な答』しか最初は出てこないわけですね。

ところが、私が設定したルールのように「絶対に他人と違う答を言わなければいけない」という状況に置かれれば、後半では『斬新な答』が出てくる。

これはつまり『誰でも斬新な発想はできる』ということです。

天才的な発想力なんぞ持っていなくても、ひとつふたつ答えが出たところで満足せず、とにかく「まだまだ!」とたくさんの答を出していけば、最後には面白い答が出てくるのです。

苦し紛れであろうが、突拍子もなかろうが構いません。

どうせ出てきた答は後で評価するのです。

必要なのは、諦めずにひたすら考える『忍耐力』だけです。

ただ、もちろん忍耐力(でたくさんの答を出すこと)だけで斬新な発想ができ、それでイノベーションが確実に起こせるとは言えません。
ここで何度も言っている「視座・視野・視点を変える」といった思考のコツや、様々な発想法やツールの活用なども必要でしょう。

限られた時間の中で良い答を出す、つまり発想の生産性を考えれば。

しかし、忍耐力だけで斬新な答えが出るまでしつこくたくさんの答を出すというやり方は、「誰でもできる」手法です。

思考法や発想ツールの知識・経験などいらないからです。

とはいえ、仕事であれば生産性は重要。
いかに忍耐強くても、時間を無限に掛けて良いわけはありません。

だからポイントになるのが『ハードルの設定』です。
時間というハードル、そして答の量というハードルを設定して考える(考えさせる)のです。

たとえば「30分で50個のアイデアを出す」のように。

人間は締め切りや定量化されたゴールのような、明確なハードル(制約条件)が無いと、どうしてもダラダラやりがちです。
これは(たぶん)私だけではないはず(笑)



「イノベーティブな会社」としてすぐ名前が挙がるリクルート。
R25などのような新たなビジネスモデルを創造するだけでなく、スピンアウトして起業して成功する人が多いこともよく知られています。

ではリクルートはイノベーティブな発想ができる人ばかりが入社してくるのか?

確かにそうした天才肌の人は、割合としては他社より多いかもしれません。

しかし一番の理由は「他者と異なる発想の強制」です。
会議などで、まさに私の「他者と同じ答は認めない」と同じことが暗黙のルールになっているのです。

日常的に「斬新な発想をするトレーニングが行われている」わけですね。

彼らのイノベーティブな思考力は、「苦しみながら練習して獲得したスキル」なのです。

さて、あなたは練習しますか?
それとも「必要ないからいいや」ですか?

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパス で専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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