2009年12月19日 3分間ラーニング

『戦略的休憩』の考察

「日本人は過去十分に成長したせいで疲れているのではないか」

 エリック・シュミット(グーグルCEO)

日経ビジネスのインタビュー記事からの引用ですが、なるほどなあ、と思いました。
そして彼はこう続けています。

「日本へのアドバイスはただ1つ。経済成長はイノベーションから生まれると言うことだ」

うん、これも頷ける。

立ち止まらずにイノベーションを追求していかなければ、誰かが必ず追い越していくし、先を走っていたライバルの背中はどんどん遠ざかっていきます。

これは企業にも当てはまるし、国家にも当てはまるでしょう。

その論理はわかる。しかし、本当にその論理はこれからもずっと正しいのでしょうか?




「成長疲れで立ち止まろうとしている」

これ、立ち止まる側の視点に立てば、「走り続けるためにはたまには休憩も必要」と読み替えることもできるでしょう。

たとえば少子化の議論においても、「人口は減っても構わない。そもそもこの狭い国土に1億以上も人がいる方が異常では?」という意見があります。
「今は適正な人口に戻すための過渡期なのだ」と言われると、昨今の環境の論議も後押しし、「将来のためにも少子化はある意味必要なプロセスかも」と考えても、一概に間違いだとは言い切れません。

また不況時にリストラやコストカットを行う際に、「今は開発費をかけて売上高を伸ばすのではなく、経営体質を強化して力を蓄える我慢の時期だ」と述べる経営トップは多いですが、これも「走り続けるためにはたまには休憩も必要」ということを言わんとしています。

とは言え、シュミットの言うように「経済成長はイノベーションから生まれる」のも事実であり、のんびり休憩しているうちに競合他社に後れをとったり、経済大国の地位を中国をはじめとする新興国に取って代わられてしまうのも、我々は看過することはできないでしょう。

さあ困りました。

もちろん数学のように唯一の解がある訳ではありませんが、こういう考え方はできないでしょうか。



「休憩は必要。ただそれは戦略的であるべき」

メタファーで言うなら、『F1レースのピットストップ戦略』のように「勝つための計画的な休憩」について考えるべきだと思うのです。

F1マシンも個人も、そして企業も国家も「全速力で走り続ける」ことは不可能です。途中の燃料補給や、F1ではありませんが耐久レースであればドライバー(社長や首相等の指導者)の交代も必要でしょう。

しかし自動車レースが個人や企業、国家と根本的に違うのは、燃料補給やドライバー交代のタイミングが、あらかじめ戦略として決められているということです。

F1であれば燃料を温存しながらワンストップ(レース中の給油は1回だけ)戦略を取るのか、それとも全開で走ることを重視してツーストップ戦略をとるのか、どちらかを選択しなければなりません。
そして「何週目あたりでピットに入るのか」も決めています。

そして当たり前の話ですが、この戦略はいいかげんに決めているわけではありません。

マシンやドライバーの状態、コース形態、その日の天候、他チームとの戦力や現在の獲得ポイントなど、様々な内的/外的要因を分析した上で選択しているのです。

この考え方が企業や国家にも応用できないものでしょうか。

思うに、前述の「将来のためにも少子化はある意味必要なプロセスかも」や「今は開発費をかけて売上高を伸ばすのではなく、経営体質を強化して力を蓄える我慢の時期だ」といった考え方は、「さてそろそろ休憩しようか」という無計画な“行き当たりばったり”だと思うのです。

政権交代は計画的にできませんが、現在の内部/外部環境と今後の変化を分析し、「○○年から□□年は力を蓄える時期」のようにフルスロットルで走る時間とピットストップの時間とタイミングを計画することが今後必要ではないでしょうか。

もちろん企業が「計画的に休憩をとる」ことは、本当に立ち止まって休憩するわけではありません。
1年間休業なんてできないですから(笑)

要はメリハリをつけ、たとえば「今後2年間は売上を伸ばさなくて良い。徹底的に顧客のニーズを掘り起こし、新商品開発に投資する」といった戦略を明確にすればよいのです。

とはいえ、環境は予測通りに行くわけではありません。
不祥事や政権交代、戦争や不況など想定外の事態が起これば、当初の戦略を貫くことが却って最悪の事態を招くことも考えておかなくてはなりません。

だから戦略の「軌道修正を容認する」ことのコンセンサスをあらかじめ取っておく必要があるでしょう。(余談ですが、これができなくて右往左往しているのが現在の民主党でしょう)

そしてもうひとつ、こうした不測の事態に対処するために必要となるのが、『複数の想定シナリオとシナリオ別のオプション』です。

「こういうシナリオが確率が高いと思うが、最悪のシナリオはこうで、そうなったらこうする」といった具体的な善後策をあらかじめしくつから考えておくのです。

F1も実は天候の変化や燃費の状況に合わせて、複数のシナリオとオプションを加味したピットストップ戦略を立てているのですから。


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