iPhone日本上陸

本日午前7時、ついにアップルの携帯電話『iPhone』 がソフトバンク表参道で販売を開始しました。

従来型のキーパッドを廃したタッチパネルに操作と特徴的なデザイン、そしてMACやiPodという「オシャレ」なブランドイメージと新規契約23,040円からという割安感。

全世界で既に600万台を販売したこのiPhoneは、「売れないはずがない」商品と言えます。

だからこそドコモ、au、ソフトバンクが争奪戦を繰り広げたのであり、当面は独占販売となるソフトバンクの気勢が上がるのも当然です。

本日の販売開始時にも、孫社長自ら販売開始のカウントダウンイベントにも参加し、「携帯電話がインターネットマシンになるとずっと思ってきたが、今日はその記念すべき日だ。パソコンよりもiPhoneの方がインターネットを使っていて便利という時代になる。皆さんと興奮と感動を共有できて嬉しい」と挨拶されたようです。

確かに歴史的な日かもしれません。

しかしそれは、単に「iPhoneが発売された日」や「携帯電話がインターネットマシンになった日」ではなく、また「ソフトバンクが勝ち組に転じた日」として歴史に刻まれる日ではないように思います。

私個人としては、「ケータイの業界構造が転換した日」として歴史に残るのではないか、と密かに期待しているのです。



ある携帯電話メーカーの開発者は、「我々の携帯端末は、いわばリフォームを繰り返してきた建売住宅。そしてiPhoneはユーザーニーズを反映した注文建築」と表現しています。

この言葉から見えてくるのは、

◆建売住宅
 →仕様の標準化による無個性化
◆リフォームの繰り返し
 →機能追加の繰り返しによる肥大化

という、キャリア主導によるこれまでの携帯電話の開発プロセスに対する危機感です。

「ケータイでメールすればポケベルは不要です」に始まり、
「ケータイで写真が撮れます。メールですぐ送れます」
「インターネットができるようにしました。これでお買い物もできます」
「ゲームもできるし音楽も聴けます。テレビも観られるようにしました」
「オサイフも定期券もケータイがあれば不要です」

さて、あなたはケータイを主に何を目的に購入していますか?

キャリアやメーカーの立場としては、「ユーザーのニーズを取り入れて機能追加をしてきた」と言いたいところでしょう。

しかし、本当にユーザーは「どのメーカーでも同じ機能の端末」や「使わない機能満載の重い端末」を望んでいるのでしょうか?

技術革新で「これができるようになったからケータイに載せよう」という、プロダクト・アウトの発想以外のナニモノでもないと思うのは私だけでしょうか?

キャリアもメーカーも、「あちらがやるのならウチも載せておかないと」という、本来戦略の常道である差別化をあえて拒否しているようにも見えるのです。

これではユーザーは「選択肢がないから仕方なく買っている」に等しいとすら思います。

もちろんメーカーも差別化を全く拒否しているわけではありません。
薄型テレビのブランドを活用したプロモーション戦略や、操作性の改善などによる商品戦略は、マーケティング・ミックスの王道と言えるでしょう。

しかしこれらは『小手先』の戦略と言わざるをえません。

たとえばゲーム機業界における任天堂のDSやwiiのような、ドラスティックな“コンセプトからの差別化”は、携帯電話業界には皆無だったのです。

そうした閉塞した業界に訪れた黒船が、今回のiPhpneだと思うのです。

「なんでもケータイに突っ込めばいいってもんじゃないでしょ?」
「ウチのターゲットはオシャレに敏感でスマートに生きたい人。ケータイに生活必需品を求めている人は買わなくて結構」

というアップルの声が聞こえてくるようです。

アタリマエですが、ケータイに求めるニーズは人それぞれ。
アップルは、その「ニーズのひとつにちゃんと応える」製品を作ったに過ぎません。

他のメーカーもそれに気づいたはずです。

確かにこれまではキャリア主導であり、メーカーは言われるままにリフォームを繰り返してきました。
しかし実のところ、「その方がメーカーとしても楽」だったのです。

しかしこれからは違います。

メーカーの開発者としては、アップルが敷いた「ユーザーニーズに応えた商品を作る」という道に対して、「リスク承知で挑戦するか。それとも今まで通りキャリア・メーカーお手々繋いで頑張るか」という選択をしなければならないのです。

業界のビジネスモデルそのものが変わろうとしています。
メーカーの淘汰もいっそう進むでしょう。
もしかしたら、これを契機としてメーカー・キャリアを巻き込んだ大規模なM&Aも起こるかもしれません。

孫社長も、本日のiPhone発売を手放しで喜んではいないでしょう。

これからの携帯電話業界、面白くなりそうです。

ところで、私自身はiPhoneを買うつもりはありません。

私のニーズには合わないからです。

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プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパス で専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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