組織を動かす歯車になろう《今年と過去の新入社員へのエール》


3分間ラーニング

先週は2つの新入社員研修で、新たな門出を迎えた方々とご一緒させていただきました。

毎年恒例の新入社員タイプの命名では、今年は『カーリング型』とのこと。
バブル期以来の売り手市場ということで、「氷の上を滑るようにスムーズに、苦労せずに就職を決めた」ということと、苦労していないからこそ「今後も会社がブラシで丁寧に氷を磨くように、良い環境を作ってあげないといけない」、ということからの命名のようです。

私は新入社員研修では、1973年入社のパンダ型(おとなしく可愛いが、人になつかず世話が大変)から、昨年のデイトレーダー型(損得勘定で動き、早期転職も予想される)まで、いくつかの新入社員タイプを説明します。
そうして「タイプの異なる様々な先輩・上司・仕事の関係者と、うまくコミュニケーションすることの重要性」とともに、「偉そうにしている上司や先輩も、元は新入社員なので臆する必要はない」こともお話ししています。

まあそもそも、ステレオタイプなこうした分類が、すべての新入社員に当てはまるはずもないのですが(笑)

さて、講師として新入社員の方々とお話ししていると、みなさんそれぞれに夢や希望、そして不安を持っているのが手に取るようにわかります。
これは入社年度に関係なく、新しい世界に飛び込むのだから当然のこと。
願わくば、仕事に忙殺されて夢や希望を忘れてしまうことの無いよう、そして不安は少しずつ払拭しながらも、自分のレベルアップのために常に新しい不安を見つけるようにしていただきたいものです(不安無くして課題は見つかりませんから)。

さて、そうした「会社組織で仕事をすることの不安」のひとつに、『組織の歯車になってしまうこと』が挙げられます。
これは特に大企業のような大きな組織に入る方々に顕著です。
実際、ベンチャー企業に入社を決めた人は、「組織の歯車になりたくなかったから」を理由として挙げる方も多いようです。

しかし私は思うのです。

「歯車になることが、そんなにマズいことなのですか?」




思うに、「歯車になりたくない」という考えは、

(1)「システムの構成部品の一つ」という無機質さがイヤ
(2)「決まったことを繰り返しやるだけ」という創造性の無さがイヤ
(3)「別の力で回されている」という主体性の無さがイヤ

が主な理由でしょう。

(1)については、「感情のある人間を機械の部品にたとえるとは何事だ!」ということでしょうから、「たとえ話だから、あまり目くじらを立てないで」とお願いするしかありません(笑)が、(2)(3)については、ちょっと反論させてください。

(2)は要するに「ルーティンワークがイヤ」と言い換えることができますが、ルーティンワークが簡単だと思っているとしたら、それは大きな間違いです。決まったことをキッチリやるためには、それなりの経験やスキル・知識が必要ですし、それすらもやれていない、つまり歯車にさえなれていない人も多いのです。

また、ルーティンワークは創造性が無いというのも間違いです。
ルーティンワークで決められているのは、その仕事の結果、つまりアウトプットだけです。もちろんやり方が細かくマニュアル化されている場合もありますが、ハンバーガー屋さんのバイトと違い、個人の工夫でやり方を改善しても良いのです。それによってたとえば作業時間が短縮できれば、それは立派な個人の成果として認められるのです。

(3)については、実は社長ですら別の力で回されていることを認識すべきです。
山奥で一人で暮らす仙人ならいざしらず、仕事はひとりでやるものではありませんから、多かれ少なかれ、自分以外の力や外部環境の影響は全員が受けています。
実は仙人でさえ、大自然の影響は受けているわけですから、地球環境という大きなシステムの中では、全ての生き物は歯車の一つとすら言えます。

また、歯車が回るのは“他の歯車によって動かされている”からだけでしょうか。
“モーター等の動力によって自力で回っている”歯車もあるはずです。
つまり歯車にも、“周りに動かされている歯車”と“周りを動かしている歯車”があるのです。

「歯車には主体性がない」と文句を言うのではなく、この“周り(組織)を動かす歯車”になれば良いのです。

しかしながら、この組織を動かす歯車になるのは、口で言うほど簡単ではありません。
人(他の歯車)を動かすには、斬新なアイデアやそれを生み出す知識とスキル、そして説得のための高いコミュニケーション能力が必要です。
つまり自分自身と周りの両方に対して、膨大なエネルギーが必要なのです。
組織を動かす歯車を選択したら、「周りに動かされている歯車」がいかに楽だったか(これも前述の通り本当に楽なわけではないのですが)を思い知ることでしょう。

しかしだからこそ、私は全ての新入社員の方々に、最終的には組織を動かす歯車を目指してほしいと思うのです。
そしてそれを目指すためにも、日々の学習とそれによる自己のバージョンアップを怠らないでいいだきたいと思います。


実のところ、本当の歯車はひとつ欠けても機械は止まってしまいます。

だからまずは「お前が止まると困る」と言われるような、立派な歯車を目指しましょう。
カラ回りをせずに、ガッチリ隣の歯車とかみ合って早く着実に回せるようになりましょう。
自分なりの工夫もしながら、ルーティンワークですら創造的にこなしましょう。

そうしたら、「今度はウチで回ってくれ」と声がかかるようになります。
組織という機械は、常に改造と拡大を続けることが宿命ですから、歯車も一カ所で一生を過ごすわけではないのです。
だから歯車も自分自身を大きくしたり、歯の数を増やしたりという、バージョンアップをおろそかにしてはいけません。
時には複数の歯車と同時にかみ合い、それらを回すことも覚えなければならないでしょう。

そして、その過程で、ぜひ動力を持った歯車になってください。
動かされている時間より、周りを動かす時間が大きくなるように、計画的・戦略的に自分の周り方をコントロールしてください。


それがいつの間にかできるようになっていた時、あなたは『ビジネスリーダー』と呼ばれているはずです。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパス で専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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