2007年10月31日 ニュースの切り口, 講師の公私

東京モーターショーで考えたこと

昨日、休暇を取って『第40回 東京モーターショー』に行ってきました。

平日にも関わらず会場は大盛況で、特に日産の《GT-R》や三菱の《ランサーエボリューションⅩ》は、現車が見えないほど大人気でした。

全体の傾向としては、やはり環境・温暖化対策に各社力を入れており、電気自動車やクリーンディーゼルの展示も目を引きました。
また、従来の自動車の枠を拡大した「新たなモビリティの提案」として、トヨタやスズキの一人乗りコミューターや、ホンダの“リアルやわらか戦車”とも言うべき、本当に柔らかい車体を持つ《PUYO》、キャビンが半回転しバックも実質前進で、真横に動いて縦列駐車も楽勝の日産《PIVO-2》など、ユニークなクルマが目白押しでした。
(なお、この《PIVO-2》は、表情や会話からドライバーの状態を読み取って話しかける「ロボティック・エージェント」機能も有しており、SFの世界がどんどん現実のものになっているのを感じます)

そして前回(2005年)と比較して、もうひとつ特徴的だったのが、『国内メーカーのスポーツカーへの注力』です。



ポルシェやフェラーリがスポーツカーを展示するのは当たり前です。また、今までのモーターショーでも、国内メーカーもスーパーカーとも言えるクルマを展示していました。しかし、それはあくまでもコンセプトカーのレベルであり、「こんなクルマも作れますよ。すごいでしょ」という、自動車メーカーとしてのアイデンティティを示すものでした。

ところが今回は、前述の《GT-R》《ランサーエボリューションⅩ》の他にも、レクサス(トヨタ)の《IS-F》やスバルの《インプレッサ WRX STI》という、スポーツタイプ市販車のアピールに力が入っていました。

こうしたクルマ達は、スピード・パワーと引き替えに、「燃費が悪い」という特徴がありますから、実は前述の“環境・温暖化対策”とは相反するはずです。

では、なぜメーカー各社は、こうした矛盾とも言える戦略をとるのでしょうか。

そこには、昨今の「若者のクルマ離れ」という風潮への危機感が見て取れます。
業界全体としては、北米やアジア市場での好調に支えられて業績も堅調ですが、日本国内に目を向けると、販売台数は低下し続けています。
さらに少子高齢化がこれに拍車をかけることが予想されますから、メーカーとしては「若年層の裾野を広げる」ことが大命題なのです。

「速くてカッコイイ」クルマは、男の子のあこがれでした。
手の届かない戦闘機や戦車(特撮やアニメに出てくるメカも含めて)に比べ、自動車は身近な「男の子の物欲を満たす」存在だったのです。

ところが、「モノより思い出」というCMではありませんが、この物欲がどんどん薄れてきているように思います。「家は賃貸で十分」「ケータイは1年で買い替え」といった風潮は、まさに「所有する」ことに意味を感じない人が増えたとも言えるでしょう。
(ちなみにこの「モノより思い出」が、クルマのCMのキャッチコピーというのも皮肉な話です)

先日のTVニュースでの街頭インタビューでも、「電車の方が安心・確実」「必要ならタクシーやレンタカーで」といった意見が多く聞かれました。

そこでメーカーとしては、「昔みたいに、今一度クルマを男の子のあこがれに」と考え、「速くてカッコイイ」クルマをアピールしているのでしょう。

しかし、この「昔みたいに」というコンセプトだけでは少々厳しいのも事実。
そこには、「男の子は速くてカッコイイメカにあこがれる」「あこがれを持たせれば購買意欲に結びつく」という前提条件が必要だからです。

価値観が多様化している今、あこがれの基準も様々です。だからこそ各社「速いだけではないユニークなクルマ」も展示し、若年層のニーズをとらえる努力もしています。(実は私が今回見たクルマの中で最も「カッコイイ!」と思ったのも、小さくて無骨なダイハツの《MUD MASTER-C》というコンセプトカーでした)

また、あこがれてもそれが手に届くものでなくては、購買行動には結びつきません。昔は300万円台だった《GT-R》ですが、今度のは最低でも770万円であり、かつタイヤ交換だけでも50万円もかかるとのこと。これでは昔の特撮メカへのあこがれとあまり変わりないとすら言えます。

これに関しても、各社全く無策というわけではありません。各社100万円台から買えるコンパクトカーのスポーツタイプ(ターボ化や足回りをチューンしたバージョン)を“エントリースポーツ”と位置づけ、若年層にアピールしています。
(今回のモーターショーでも、スズキ《スイフトスポーツ》やマツダ《デミオスポルト》は人気でした)
また、トヨタは社内プロジェクトで、「安価なスポーツタイプの開発」を進めているというニュースも伝わっています。

こうしたメーカーの試行錯誤には、いちクルマ好きとしてはエールを贈りたいのですが、もうひとつメーカーに頑張ってもらいたいことがあります。

それは「モーターショーに若年層を呼び込むこと」です。

せっかくの努力も、その成果を見てもらわなければ意味がありません。
今回のモーターショーも、熟年層が目立ち若年層は少なめだとあるブースのスタッフから聞きました。

今年は間に合わないとしても、ぜひ次回(2年後)のモーターショーには、早くから若年層を呼び込む仕掛けをしてほしいと思うのです。

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